排泄について

排泄もまた、生活の中で欠くことのできない行為です。排尿については、人によって一日数十回にも及ぶことがあるため、一人でまったくできない方の場合、介護者の負荷はとても大きくなります。介護者と介護される方の負荷をともに軽減させるためには、本人の現状を評価するだけでなく、介助者と住環境の評価も重要です。
ここでは、本人の実際の状況と家族・介助者側の状況から、まず排尿の使用手段(大項目)を選択してください。
そして、大項目から選択した手段について、項目ごとに内容を確認してください。

1.使用手段の選択

◎「できる」…1人で完全にできる(介助者が実際にその場面につくことができ、介助することによりできる場合も含む。)
▲「できない」…実際にできないこと(能力があっても介護者がつけず、結果的にできない場合を含む。)

①排尿

排尿は最初に尿意の『ある』『なし』で分類し、本人・介助者の状況として近いところから選択してください。

  使用が適している状態 使用手段
尿意がある場合 ◎トイレ動作ができる トイレの使用

▲トイレまで移動できない
◎ポータブルトイレへの移乗はできる
・頻尿で回数が多い。
・トイレまで間に合わない。
・昼間はトイレでも、夜間の使用には危険である。

ポータブルトイレ

▲トイレ、ポータプルトイレの使用ができない
▲座位がとれない
・夜間ベッド、ふとんから移動すると危険である。
・頻尿で回数が多い。
▲ポータブルトイレヘの移乗はできないが、本人が尿器の管理をできる。または、介助者に行ってもらえる

尿器

▲トイレ、ポータブルトイレ、尿器が使用できない
▲頻尿で回数が多く、全く介助者がつくことができない

オムツ
尿意がない場合 ◎時間排泄ができる トイレ・ポータブルトイレ・尿器
▲全く特定できない オムツ
尿意があったりなかったりの場合 失禁の状況と介助者がつくことができるかどうかによって、上記のいずれかを選択する

②排便

排便のときも、選択の仕方は排尿のときと同じです。ただし、便意を訴えない方でも座薬などの使用により排便の時間を特定できる場合は、トイレ・ポータブルトイレを使用します

2.使用手段の確認

トイレを使用する動作を考えるとき、行程ごとにできるかどうか見ていきます。それによって、何を使うのが適しているか、大体の目安となるものが決まってきます。

◇部屋 ⇔ トイレの出入口までの移動
◇(トイレ内の移動)トイレの出入口 ⇔ 便器
◇便器への座り、立ち止がり
◇衣服の上げ下ろし、後始末

①トイレの使用

○洋式トイレの場合

 

  現在の移動の状況

部屋⇔トイレの移動手段

トイレ内での移動手段出入口⇔便器

便器への座り/立ち上がり

衣服の上げ下ろし/後始末
全介助

・車椅子(移乗、運転、操作とも全介助)

・抱き抱える

車椅子または、シャワ―キャリー ①車椅子、シャワーキャリーの幅 < トイレ扉の有効幅

②トイレ出入口の段差を乗り越えることができる

車椅子

→全面介助

シャワーキャリー

→後方から入る

全面介助

*シャワーキャリーを使用する場合は、部屋で行う方がよい

①、②のどちらか一方でもダメな場合、便器まで前面介助で移動する 全面介助

自立~

半介助

(どのような介助でもあれば含む)

独歩・つかまり歩き、

杖・歩行器、

介助による歩行(手を引いての歩行・介助者が見ていなければ危険な歩行)

手すりの設置
(基本的には横手すり)

手すりの設置

(基本的には縦手すり)

・一人で立ったときにバランスが悪い場合、衣服の上げ下ろしは介助が必要

・後始末は行える

車椅子

(移乗、運転、操作とも自立)

車椅子

①車椅子の幅 < トイレの扉の有効幅

②出入口の段差を乗り越えることができる

手すりの設置

(基本的には縦手すり)

①、②のどちらか一方でもダメな場合、便器まで手すりで移動する。それができないときは、介助による移動

車椅子

(運転・操作は自立、移乗は介助が必要)

車椅子または、シャワーキャリー ①車椅子、シャワーキャリーの幅< トイレ扉の有効幅

②トイレ出入口の段差を乗り越えることができる

車椅子

→介助が必要


シャワーキャリー

→後方から入る

全面介助

*シャワーキャリーを使用する場合は、部屋で行う方がよい

①②のどちらか一方でもダメな場合、便器まで全面介助で移動する 介助が必要
這う 這う 這う 手すりを利用して便器へ座る  

 


○和式トイレの場合
基本的に改造を行う必要がなければ、次のものを利用して和式トイレを洋式として使うことができます

和式トイレ ⇒洋風便器据置式
段差和式トイレ ⇒洋風両用便器

プラスチック製 ・・・安い、軽い
陶器製     ・・・高価、重量があり安定感がある、汚れがつきにくい

②トイレ内で使用する介護機器の注意事項

○シャワーキャリーの選択方法について
 ◇トイレに直接入れて使用するための条件
  1.シャワーキャリーの横幅が、トイレの扉の有効幅(実寸法)より小さいこと
  2.洋式便器に差し込める(うまく重ね合わさる)種類のシャワーキャリーであること
  3.トイレの出入口の段差解消を行うこと
  4.部屋からトイレまでの通路部分の段差解消を行うこと
  5.便器の向きにシャワーキャリーで曲がることができること
  6.移動するまでに足が床につく場合、足乗せのあるものを選択する
   *3、4の段差解消は、1~2cmの場合でも行います

 ◇トイレまでの移動手段として使用するための条件
  上記1、3、4、5の条件が合えば便器手前までの移動は可能です
  上記4のみの場合はトイレの扉付近までの移動となります

○手すりについて
手すりについては、壁に直接取り付けるタイプ、折りたたみ式、ポールの組み立て式など様々なタイプがあり、建築上工事が可能かどうかで決まってきます
 ◇壁に取り付けるタイプ(壁に手すりを取り付けるだけの強度が必要)
  折りたたみ式・・・トイレの横幅が広くI型・L型の手すりを取り付けても届かない場合
 ◇組み立て式(取り外しができ、工事不要)
  ポールを出して壁につっぱらせて固定するタイプ・・・掃除に手間がかかる
  便器に固定するタイプ

○補高便座について
便器からなかなか立ち上がれない場合、手すりの設置以外に便器の高さが適当であるか考えます。本人が立ち上がりやすい高さにするとよいでしょう

注意事項
(1)家族も共用しているトイレの場合、家族が使用できる高さかどうかを確認します
(2)男性の場合、排便・排尿の姿勢が違うため、便座を高くすることで排尿のときに邪魔になることがあります
(3)補高の際に、立ち上がりやすくするためだけに高くしすぎると、座ったときにお尻の位置が手前になり、かえって排尿しにくくなることがあります。

◇補高便座のタイプ
便器に取り付けるタイプ・・・5cm、10cm、15cmの中から高さを選択できます
据置型        ・・・高さ調整が可能であり、トイレ以外にもシャワー椅子としても使用できます

③ポータブルトイレの選び方

本人の状況・要望をもとに、どういう機能がついたものを選択すればよいか考えます。最終的に多くの条件が必要になっても、最も必要な機能を備えた機種を選択するとよいでしょう

本人の状況、要望 選択する基準
座位が安定している 標準型
座位が不安定 背もたれ、肘掛けつき
ポータブルトイレ用手すりの取り付け
木製の椅子型ポータブルトイレ
移乗のときに手すりが必要 肘掛け付き
ポータブルトイレ用手すりの取り付け
ベッド回りへの手すりの取り付け
立ち上がりが困難 ポータブルトイレの高さの選択
高さを調節できるもの
立ち上がりのときに、両足が下に入るタイプのもの
外でも使用したい
スペースをとらないもの
折りたたみ式
移乗のとき横へ移動する 肘掛けなし、または肘掛けが取り外しできるタイプ
普段は椅子として使用 木製の椅子型ポータブルトイレ
外観を気にする
使用しないときは収納したい 収納できるタイプ

 
○ポータブルトイレのタイプ

標準型 高さは36cmのものが一般的
デラックスタイプ 背もたれ、肘掛け付き
収納タイプ
36~39cmの高さのものもある
木製椅子型 見栄えがよい
安定している
普段椅子として使用可能
座面の高さ、肘掛けの高さが調節できるものもある
肘掛けが取り外し可能なものもある
座面のシートが上がるタイプと後方へスライドするタイプがある
高価
足が下に入りやすい


支柱型

高さ調節可能
背もたれ付きのものもある
手すり付き
折りたたみができるタイプもある
シャワー椅子としても使用可能

④尿器の選び方

 

機種 選択の基準
安楽尿器
採尿器
直接性器に当てるタイプのものより不潔になりやすい
掃除が不便
尿器 漏れやすい
女性の場合、陰部に押し当てるだけの力がないと使用が難しい
スカットクリーン

吸引タイプのため漏れにくく、臭いが少ない
高価

差し込み便器 女性の場合、尿器よりは漏れにくい
寝たままの姿勢で排便、排尿が行える

 

⑤オムツの選び方

(体型・尿の量・回数・価格に合わせて選択します)

本人の状況 使用するオムツ
寝たきりで動くことが少ない 紙オムツ、オムツカバーの併用
よく動く、尿の量が多い パンツタイプの紙オムツ
頻尿、尿が少ない 尿パットの併用(紙オムツを切って代用することも可能)
軽い失禁がある 失禁パンツ
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